棟上げ中に落下し、下半身の自由を失って久しい大工の芳蔵


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▼乙川優三郎著「冬の華」は、医者の文礼と、棟上げ中に落下し下半身の自由を失って久しい大工の芳蔵、それに肺病で余命いくばくもない16歳の娘の二人の患者との話です。2回に分けてご紹介いたします。


▼芳蔵は、仕事はもちろん、日常生活も困難になって、絶望と不安の日々を送り続けている。



妻と、子供は3人。上二人は奉公に出て、妻も仕事に出て帰りが遅い、7歳になる末の子が日中は一人で芳蔵の世話をしている。

医者の文礼が往診で訪ねていきます。


▼「人間の体には本人も分からない力が潜んでいることがある。考えられることをやってみて駄目ならあきらめもつく、だがお前は何もやっていないし、治すために苦しんでもいない」


芳蔵は黙っていた。沈黙は嫌なことから自分を守る方便で、居心地の良い安全で狭小な世界を脅かす相手を認めない。
 


▼「大工が大工でいられなくなったら、終わりなんだよ」



このあきらめはもう克服してもよい時期であったから、歯がゆく思う人が増えて、同情する人もいないのが彼の現実である。子供も親の姿を見抜いている。



▼目の前に広い世界と新生の可能性がありながら、自分のことしか眼中にない人間の常で、芳蔵は落ちぶれても気位が高く、傷つきやすい。誤解が多く、思いがけないことでかっとする。そのくせ自分より正しいものはないので、人の言うことを心から聞こうとしない。



  


 
▼脳卒中で片麻痺となった私は、この小説に衝撃を受けました。目の前に広い世界と新生の可能性がありながら、自分のことしか眼中にない人間「お前も芳蔵でないのか⁈」何度も自問しました。



この小説を読んだことで、自分の再生の道がスタートしたのです。



脳卒中により中途障害者になった場合、当初「自分のことしか眼中にない」状態に至ります。ある面仕方ないのですが、再生のためには其処を越えなければならないと感じます。


 【同病の三本松のおじさんの一言】

私このような筋書きの小説に弱いんです。後でこのようなダメ人間がささやかな光を見出すと涙がちょちょ切れてくるのです。しかし一部の強者を除いて誰でも芳蔵さんと同じなんだと思います。強がってハッタリで生きている人以外は。


【返信】

お弱いですか!?

初めて読んだ時は、自分が似たような境遇に置かれてましたので、隠れた力など、ほんまあるんかいな?!と懐疑的でしたが・・。






















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